ホテルの客室稼働率を上げる方法|目安や計算方法から利益を最大化する施策まで
ホテルの安定経営において、客室稼働率の向上は重要な課題です。
稼働率を高めることは収益に直結しますが、単に数値を上げるだけでなく、客単価とのバランスを取りながら利益を最大化する視点が求められます。
この記事では、客室稼働率の基本的な計算方法から、業界の平均的な目安、そして明日から実践できる具体的な改善策までを解説します。
OTAの最適化やSNS活用、リピーター戦略など、多角的なアプローチで収益向上を目指しましょう。
宿泊施設の稼働率を理解するための基礎知識
宿泊施設の稼働率を改善するためには、まず関連する指標を正しく理解することが不可欠です。
稼働率とは、ホテルが提供する販売可能な客室のうち、実際にどれくらいの客室が利用されたかを示す割合を指します。
この数値は、施設の集客力を測る基本的な指標であり、収益性を分析する上での土台となります。
稼働率を正確に把握し、他の重要指標とあわせて分析することで、経営課題の特定と改善策の立案が可能になります。
客室稼働率(OCC)の正しい計算方法とは?
客室稼働率は、特定の期間において販売した客室数を、販売可能な総客室数で割ることで算出されます。
計算式は「稼働率=販売客室数÷総販売可能客室数×100」です。
例えば、100室の客室があるホテルで、ある日に70室が販売された場合、その日の稼働率は70%となります。
この計算方法を日次、月次、年次で用いることで、施設の利用状況を正確に把握し、時期ごとの需要変動を分析するための基礎データが得られます。
稼働率とあわせて確認すべき重要指標(ADR・RevPAR)
稼働率だけでなく、ADR(平均客室単価)とRevPAR(販売可能客室あたりの売上)もあわせて確認することが重要です。
ADRは販売した客室の平均価格を示し、RevPARは稼働しているか否かにかかわらず全客室から得られる1室あたりの売上を示します。
稼働率が高くてもADRが低ければ収益は伸び悩みます。
RevPARは稼働率とADRの両方を反映した指標であり、ホテル全体の収益性をより正確に評価するために不可欠です。
なぜ客室稼働率の向上がホテル経営で重要なのか
客室稼働率の向上は、ホテル経営における収益基盤の安定化に直結します。
稼働率が高い状態は、客室売上だけでなく、レストランやスパなど付帯施設の利用促進にもつながり、施設全体の売上増加に貢献します。
また、常に賑わいのある状態は、ホテルの人気やブランドイメージの向上にも影響を与えます。
さらに、安定した稼働は、将来の需要予測や人員配置、仕入れ計画の精度を高め、経営の効率化を実現する上でも重要な役割を果たします。
自施設の稼働率は高い?低い?現状を把握する2つの指標
自施設の稼働率が市場においてどのような位置にあるかを客観的に把握することは、戦略立案の第一歩です。
そのための目安として、公的な統計データに基づく「平均稼働率」と、事業の継続に最低限必要な「採算ライン」という2つの指標を用いるのが効果的です。
これらと比較することで、自施設の強みや弱み、そして目指すべき具体的な目標値が明確になります。
【2023年最新】国内宿泊施設のタイプ別平均稼働率
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2023年の客室稼働率は、10月時点で全体で62.0%でした。
これはコロナ禍以前の水準に近づきつつある回復傾向を示しています。
施設のタイプ別に見ると、一般的にシティホテルやビジネスホテルの稼働率は高く、旅館やリゾートホテルはそれに次ぐ傾向があります。
こうした全体の平均や統計データを参考に、自施設の平均稼働率が市場の動向と比べてどの水準にあるのかを定期的に確認することが重要です。
利益を確保するために超えるべき「採算ライン」の考え方
採算ラインとは、ホテルの運営にかかる全てのコストを売上でカバーできる損益分岐点の稼働率を指します。
このラインを算出するには、まず人件費や減価償却費などの「固定費」と、リネン代や水道光熱費などの「変動費」を正確に把握する必要があります。
算出したコストを客室単価で割り戻すことで、利益を出すために最低限必要な稼働率が明らかになります。
この採算ラインを超えることが、安定経営を維持するための絶対条件です。
【即実践】ホテルの客室稼働率を上げるための具体的な施策5選

稼働率を向上させるためには、多角的なアプローチが必要です。
ここでは、多くの宿泊施設で効果が期待でき、即座に実践可能な5つの具体的な施策を紹介します。
予約サイト(OTA)の最適化からSNSの活用、ターゲットを絞ったプラン造成、リピーター育成、そして効果的なキャンペーンの実施まで、自施設の状況に合わせて組み合わせて実行することで、着実な成果を目指せます。
予約サイト(OTA)の掲載情報を最適化して予約数を増やす
多くの利用者が宿泊先を探すOTA(Online Travel Agent)での見せ方は、予約数に直接影響します。
まずは、施設の魅力を最大限に伝える高品質な写真を複数枚掲載することが基本です。
特に、清潔感が伝わる客室や共用スペース、食事が魅力的に見える写真は不可欠です。
また、プラン説明はターゲット顧客に響く言葉で具体的に記載し、口コミには丁寧に返信することで、信頼性を高め予約転換率の向上を図ります。
SNSや公式サイトを活用してWebからの新規顧客を集める
InstagramやFacebookなどのSNSは、潜在顧客へアプローチする強力なツールです。
施設の日常や周辺の観光情報、イベントの様子などを定期的に発信し、フォロワーとのコミュニケーションを図ることで、施設のファンを増やし予約につなげます。
また、公式サイトでは、魅力的なコンテンツの提供やSEO対策を行い、検索エンジンからの流入を増やすことも重要です。
SNSと公式サイトを連携させ、一貫した情報発信で新規顧客の獲得を目指します。
「推し活」「記念日」などターゲットを絞った宿泊プランを造成する
多様化するニーズに応えるため、特定のターゲット層に特化した宿泊プランの造成は有効な手段です。
「推し活」を応援するプランや、誕生日・結婚記念日を祝うための特別な装飾や特典が付いたプランは、付加価値が高く、価格競争に陥りにくい特徴があります。
ターゲットのニーズを深く理解し、心に残る体験を提供することで、特定の目的を持つ顧客層を確実に取り込めます。
リピーターを育成して安定的な集客基盤を構築する
新規顧客の獲得コストは、リピーターの維持コストよりも高いと言われています。
安定した経営基盤を築くためには、一度利用した顧客に再訪してもらうための施策が欠かせません。
会員制度を設けて限定特典を提供したり、メールマガジンで季節の情報や限定プランを案内したりすることで、顧客との継続的な関係を構築します。
質の高いサービスで満足度を高め、再訪を促すことが、長期的な稼働率の安定化を実現します。
期間限定の割引キャンペーンで直近の空室を埋める
直近の予約が伸び悩んでいる場合、期間限定の割引キャンペーンは即効性のある対策となります。
例えば、「直前割」や「タイムセール」といった形で数日間限定の割引プランを提供すると、価格に敏感な層の予約を喚起できます。
また、早期の予約を促す「早割」は、先の予約を確保し、売上の見通しを立てやすくする効果があります。
ただし、過度な割引はブランドイメージの低下や客単価の下落につながるため、時期や期間を限定して戦略的に実施することが求められます。
稼働率向上と両立させるべき利益を最大化する戦略

客室稼働率を高めることと、事業としての利益を最大化することは必ずしも同義ではありません。
満室であっても、不適切な価格設定や高い販売手数料が原因で利益が圧迫されるケースは少なくありません。
ここでは、稼働率の向上を目指しつつ、最終的な収益性を高めるための戦略的なアプローチについて解説します。
価格設定の最適化やコスト管理を通じて、持続可能な成長を目指しましょう。
ダイナミックプライシングで需要期・閑散期の収益を最適化する
ダイナミックプライシングは、需要と供給のバランスに応じて宿泊価格を変動させる戦略です。
周辺のイベント情報、競合施設の価格動向、過去の予約データなどを分析し、需要が高まる時期には価格を引き上げて客単価を向上させます。
逆に、閑散期には価格を下げて稼働率の底上げを図ります。
この手法により、機会損失を最小限に抑え、シーズンごとの収益を最適化することが可能です。
手動での調整も可能ですが、専用ツールを導入するとより効率的です。
手数料の安い自社予約サイトへの誘導を強化する
OTA経由の予約は集客に貢献する一方、売上に対して10%前後の販売手数料が発生します。
利益率を高めるためには、手数料のかからない自社予約サイトからの直接予約比率を高めることが重要です。
公式サイト限定の特典(レイトチェックアウト、ウェルカムドリンクなど)を用意したり、「ベストレート保証」を掲げて最安値で予約できることをアピールしたりする施策が有効です。
OTAの集客力と自社予約の収益性をバランス良く活用します。
DXツール導入で業務を効率化しコストを削減する
PMS(ホテル管理システム)やサイトコントローラーなどのDXツールを導入することで、予約管理や料金調整といった日常業務を大幅に効率化できます。
手作業によるミスを減らし、スタッフがより付加価値の高い接客サービスに集中できる環境を整えることは、顧客満足度の向上にもつながります。
また、データ分析機能を持つツールを活用すれば、客観的なデータに基づいた戦略的な意思決定が可能になり、結果として運営コストの削減と収益性の改善に貢献します。
ホテルの客室稼働率に関するよくある質問
ここでは、ホテルの客室稼働率に関して、支配人やマーケティング担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
閑散期の対策や価格競争を避ける方法など、多くの施設が直面する課題解決のヒントを紹介します。
閑散期の稼働率を上げるには、どんな対策が有効ですか?
閑散期には、通常期と異なる客層へのアプローチが有効です。
例えば、地元の企業向けに研修や合宿プランを提案したり、インバウンド客をターゲットにしたプロモーションを強化したりします。
また、料理教室や文化体験など、宿泊以外の目的を創出するイベントを主催することも、集客のきっかけとなり得ます。
価格競争をせずに稼働率を上げる方法はありますか?
価格以外の付加価値で勝負することが重要です。
独自のコンセプトを明確にし、特定の趣味やライフスタイルを持つ層に特化した滞在体験を提供するブランディングが有効です。
例えば、ウェルネスをテーマにしたリトリートプランや、地域文化を深く体験できるアクティビティを用意することで、価格ではなく価値で選ばれる施設を目指します。
稼働率改善に役立つおすすめのシステム(PMSなど)はありますか?
稼働率改善には、PMS(ホテル管理システム)、サイトコントローラー、CRM(顧客管理システム)が中核となります。
これらのシステムを連携させることで、予約管理の一元化、料金の自動調整、顧客データの分析が可能になり、データに基づいた精度の高いマーケティング戦略を実行するための基盤が整います。
まとめ
ホテルの客室稼働率を上げるためには、まず稼働率やRevPARといった指標を正しく理解し、自施設の現状を客観的に分析することが出発点となります。
その上で、OTAの最適化やSNS活用といった集客施策、ターゲットを絞ったプラン造成、リピーター育成などを複合的に実践することが求められます。
また、稼働率の向上と同時に、ダイナミックプライシングや自社予約の強化によって利益を最大化する戦略的な視点も不可欠です。